国民の一部しか飲水を手にすることができないカザフスタンの水事情

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国民の一部しか飲水を手にすることができないカザフスタンの水事情
この記事の所要時間: 532

カザフスタンはユーラシア大陸の中心に位置し、世界第9位の広大な国土面積(アジアでは、中国、インドに次いで第3位)を有する内陸国。国土の大部分がサルイイシコトラウ砂漠やキジルクム砂漠などの砂漠や乾燥したステップで占められているため、飲料水事情は非常に悪いだけでなく、天然資源採掘や旧ソ連時代からの負の遺産を引き継いだ水汚染などが深刻な問題となっているそうです。ここではその現状と水の利用方法についてみていきましょう。

貧水国・カザフスタンの水源と現状

貧水国・カザフスタンの水源と現状
12,187kmにおよぶ国境線でロシア、中国、キルギスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと接しているカザフスタン。主要河川は8つあるものの周辺国に水源があり離れているため、水の確保が難しい地理になっています。そして地表水、地下水とも利用できる水が限られているため、カザフスタンの水供給量は、全土平均で面積1km2当たり20,000m3と、CIS諸国の中でも最下位で、ユーラシア大陸における貧水国の一つに数えられています。

国内で飲み水問題のない都市はたったの1都市

国内で飲み水問題のない都市はたったの1都市
水道の普及率は、首都・アスタナ(100%)やアルマトイ(95%)などを除けば都市部でも、80%以下。全国68の市や町では計画断水が行われていて、夜間は完全に水道が止まるそう。都市部でも人口の6.3%は水汲み場や共同井戸、湧水、給水車による給水などに頼っているのが実情だそうです。

国内で唯一飲水に問題がないといわれるアルマトイでさえも、給水施設の老朽化により、1日17時間前後の給水となっています。首都・アスタナ市では新市街地への給水は問題ないものの、旧市街地では水道管の破損が1,500件にのぼり、給水状態が極めて悪いとの報告もあります。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/europe/kazakh.html

また、「世界最高」と市民が自慢するほど水質が良いタラズでも、水道水が供給されているのは市内の一部のみで農村部はもちろん、市の郊外においても水道水は供給されていません。またアクタウは、世界的に有名なカスピ海を水源としているため、淡水化して必要なミネラル分を添加するという工程を経ないといけないため水道料金が国内で最も高くなっています。さらに水質基準は満たしているもののまずいとの定評も。一度冷凍して解凍すれば味の問題は解決するようですが、さらにコストがかかるため行われていません。以上のことからもごく一部の国民しか安全な水を確保していないということがわかります。

世界最悪の汚染度、インドの水道事情
世界には約60億~70億もの人々が暮らしており、そのうちの約5億人は水を満足に飲むことができない状況にあるといわれています。 さらに15億人は、汚染された水などによって健康被害を受けており、20億人は水分を取るのに十分な環境にありません。 つまり、世界の人口の半分以上の人が水不足、もしくは水に関する...

進む水源の水質汚染

進む水源の水質汚染
カザフスタンの東部地方では、下水の処理能力の限界を超えてアンモニア性窒素、亜鉛などが処理されないまま、Irtysh川に放出されているといわれています。さらに22カ所の主要な石油採掘地域において、267カ所から放射性物質が検出され、多くの地方で放射能汚染が深刻な事態に陥っています。さらに国境を接する中国やキルギスタン、ウズベキスタンからも汚染水が河川に流れ込むなどの被害を受けていますが、これら国々との間の水利権は充分に取り決められておらず、国際協定も充分な強制力を有していないとのこと。ちなみにIrtysh川の水質は公式には汚染段階3度(通常の汚染状態)とされていますが、今後の健康被害が懸念されるところです。

東部地方以外でも、700以上の地下水源が汚染されていることが明らかになっていて、これらは石油成分や重金属、各種有機物などによるもので、地下水の開発・利用は限界に近づいています。また、ほとんどの下水処理場は雨水の排水対策がなく、豪雨時にあふれ、上水用水源に流れ込み汚染する被害が年々増加しています。

現在国内で浄化処理無しに使用できる地表水源は、9河川、2湖沼、2貯水池しかなく(総数44ヵ所)、特に汚染の激しい地域はクズロルダで、Ural川から毒性の強いコレラ菌などのビブリオ菌が検出されています。さらに、コクシェタウ、ウラルス、クペトロパブロフスク、コスタナイなど浄水複合処理場を持たない都市も、同様の汚染が同じレベルで進んでいるといいます。

浄水器の利用が一般的。何度も濾過して再利用する地域も

浄水器の利用が一般的。何度も濾過して再利用する地域も
一般家庭では、水道事情が悪いことから浄水器を利用して水道水が飲まれています。水道管の途中に据え付けるものや、床に置く大型のものからフィルター交換が簡単な活性炭使用の小型の製品まで、品揃えは豊富なようです。しかし水質が悪い地域では飲み水は市販のミネラルウォーターで確保し、洗濯・入浴・食器の洗浄などは浄水器で何度も濾過して利用しています。

農村部にいたっては、水道がない地域も多いうえに給水車も故障が多く、また冬は豪雪で道が閉ざされるため、水へのアクセスが困難を極めています(411ある村落のうち水道が通っているのは109の村のみ)。そのため井戸水に頼っていますが、その水質も汚染が進んでいて、国による国内水資源の適切配分や国民へ安全な水の供給などの施策が待たれます。

おわりに

国の財政難により、劣悪な水環境に置かれているカザフスタンの国民。水というインフラをどれだけ整備できるかが国民の生活を守るうえでの重要条件であることにあらためて気づかされます。現在、カザフスタンが位置する中央アジアでは、飲み水を満足に手に入れられない人々が7億8000万人にのぼるといわれています。水の確保をめぐる国境を越えた小競り合いは、経済的な対立を深刻化させ、「水戦争」を招きかねない事態にあります。世界全体でこの深刻な事態をまずは認識し、一日も早く解決の方向を模索してほしいところです。

カザフスタン共和国データ

人口 16,967,000人
面積 2,717,300km2
GDP 3,955億ドル

外部リンク
カザフスタン共和国政府
地図

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