砂漠の水道事情~エジプト・アラブ共和国

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砂漠の水道事情~エジプト・アラブ共和国
この記事の所要時間: 52

エジプトに “ナイルの水を飲んだ者は再びナイル(エジプト)戻る”という古いことわざがあります。その言葉どおりに受け取れば、エジプトの水は訪れる人を魅了するほどおいしいということになりますが実情はどうなのでしょうか。砂漠の国、エジプト・アラブ共和国、通称エジプトの水道事情をご紹介します。

ナイル川をめぐる水資源問題

ナイル川をめぐる水資源問題

国土の90%が砂漠で、人口はナイル河谷およびデルタ地帯、スエズ運河付近に集中し、国土の大半はサハラ砂漠に属しています。夏には日中の気温は40℃を超え、50℃になることもあります。降雨はわずかに地中海岸にあるにすぎません。国内の水利用は、隣国から流入するナイル川の水資源に依存している状況です。エジプトにとって現在に至るまで、ナイル川流域国との連携が重要な課題となっています。

エジプトが反発。「ナイル川流域協力枠組み協定」とは?

ナイル川をめぐる水資源問題

世界最長の河川の一つであるナイル川の流域国は10カ国に及びます。下流から、エジプト、スーダン、エリトリア、エチオピア、ウガンダ、ケニア、タンザニア、コンゴ民主共和国、ルワンダ、ブルンジです。このうち9カ国(10カ国のうち、エリトリアはオブザーバー参加)が1999年にナイル流域イニシアチブ(NBI)を組織し、ナイル川の水資源の利用と開発協力などについて話し合ってきました。

そして2010年、「ナイル流域協力枠組み協定」が提案されました。新協定案では、流域各国が他国に影響を与えない範囲で自由に水を使えると規定しており、水利拡大に結び付くと考える上流国側は歓迎する一方で、下流のエジプトとスーダンは59年協定で確認された水量が担保できないことから反発。その後、2015 年3 月に基本合意が交わされ、現在も交渉が続いています。

人口増加で年中行事の“水争い”激化の恐れも

人口増加で年中行事の“水争い”激化の恐れも

ナイル川の上流国は、いずれも(エチオピアを除く)エジプトから1960年代以降に独立を果たした国々で、二つの協定は植民地時代の不平等条約のように見えるかもしれませんが、一方でエジプトとしても安易に妥協できない事情があります。水のほとんどをナイル川に依存しているからです。
取水量が減れば、産業だけでなく、国民の日常生活も大きな影響を与える可能性が高いのです。今でさえ、農家同士の水争いは夏の年中行事であるうえに、増え続ける人口も、砂漠地帯に拡大を続ける農地も、全てナイルの水を頼りにしているからです。古代文明以来、利用し続けてきたナイルの水が守られるのか、エジプトでは大きな関心が寄せられています。

一般的な飲料水は“ジィール”で摂取!?

一般的な飲料水は“ジィール”で摂取!?
交渉とは別に、政府は2005 年に、2017 年に向けた国家水資源政策および計画を策定し、水供給・管理の改善を図るとともに、新たな水資源を確保すべく、雨水利用や水再利用、地下水利用、再生水利用、海水淡水化、水利用の効率化、水損失の低減などに取り組むとしています。

エジプトは現在、上水道普及率はほぼ100%を達成していますが、下水道普及率は約 50%。農村地域ではいまだ自然処理、自然還元が一般的で、排泄物やごみが排水路に落下し水質汚濁を起こしている現状があります。そのため下水道整備には相当な投資が必要とされています。

では実際、水道水の水質はどうかというと、現地の市民でも飲み水として使用することはないそうです。一般に中東地域の河川の水は透明であっても住血吸虫や雑菌が混在していて極めて危険なため、紀元前から経験的に飲料水は湧水か地下水に依存してきた歴史があります。
現地の人は、路上のあちこちに置かれている素焼きの「ジィール」と呼ばれる壺の水が飲んでいるのだとか。素焼きなので絶えず水が外にしみ出し、外気の熱で水蒸気になります。これにより気化熱が奪われ、中の水が冷却されるという仕組みになっているのです。
ただ、不特定多数の人が備え付けのコップで飲んでいる状態なので、飲み慣れている現地の人以外はミネラルウォーターを飲用したほうが無難なようです。

ただし、ミネラルウォーターも現地で購入するときには注意が必要です。WHOが発表した飲料水の安全基準を大幅に下回って差し押さえ命令を受けたボトル入り汚染飲料水が7銘柄あり、2012年にはエジプト北部でボトル飲料水中毒(患者4千人強)を発症した例があります。現地での飲料水の取得方法については最新の情報を入手するようにしましょう。

おわりに

ナイル川の水をめぐる国際交渉に、権利ばかり主張しても解決しないことはエジプトでも認識されています。エジプトは水利用の効率化に向け、日本を含む海外支援と、水の再利用などと合わせて、目下、農業地域であるデルタにおける灌漑の節水の努力を続けつつ、流域国に貢献、協調する姿勢を示しています。エジプトのように国際社会では河川は複数の国家間を流れていることから、水の問題は国家間の紛争の原因となることもあります。地球は水の惑星といわれていますが、人が飲み水として利用できる水は全体の0.01%にも満たないといいます。限りある水資源をめぐる国家間の対話と協調がいま求められているようです。

エジプト・アラブ共和国データ

人口 82,056,378人
面積 1,001,450km2
GDP 4,426億ドル

外部リンク
エジプト政府サービス・ポータル
地図

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